かわむら整体院です。

今回は、私の理学療法士としての経験から「手首骨折後のリハビリテーション」というテーマでお届けします。

 

手首の骨折について

手首の骨折という表現をしていますが、厳密にいえば手首周辺の骨の骨折となります。

手首周辺には、肘から手首の間にある「橈骨(とうこつ)」「尺骨(しゃっこつ)」という2本の骨がありますし、その先には小さな骨が8個並んでいまして、それより先の骨は「手」になります。

ここでは転んで手をついたときに骨折しがちな、「橈骨」の骨折を例にして解説していきます。

 

つまづいたりして転んだとき、思わず手をつきますよね。

このときの衝撃が吸収しきれなかったりすると、橈骨の先の方が「ポキッ」と折れることがあります。

このような場合、橈骨遠位端の骨折という名称がついたり、「コーレス骨折」と呼ばれたりもします。

 

発育途上の子どもの場合、骨の遠位端には成長軟骨があるため、曲がってくっつかないように細心の注意が必要になります。

 

骨折後の医学的処置について

基本的に医学的処置に関しては、医師の専権事項ですのでこの記事内では具体的な記述はいたしません。

あくまでも私が病院勤務時代に経験した範囲内で、教科書レベルに基づいて解説していきます。

 

骨折の種類には大きく次の2種類あります。

  • 単純骨折
  • 複雑骨折

この分類は、簡単か難しいかというわけ方ではなく、骨折した骨が外部に飛び出ているかどうかという基準で判断します。

骨折した骨が外部に飛び出ている場合、空気や外部のバイキンに触れる可能性があるので、「単純に骨をつないで傷を閉じればいい」とはできなくなります。

感染症の管理をしっかりしてからの接合となります。

 

単純骨折の場合、折れた骨の位置を整えて固定していれば、自然治癒力によってかってに骨はくっつきます。

固定には、ギプスやシーネのように石膏で固める方法と、手術によって金具で固定する方法があり、その選択は医師の裁量でおこなわれます。

ギプス固定の場合、長いあいだ固定する必要があるので、固定された関節はかなり固まります。

対して金具で固定した場合は、手術後すぐに動かせるので関節の動きは回復されやすくなります。

 

骨折後のリハビリテーション

医師による医学的処置の後でおこなわれるのがリハビリテーションとなります。

リハビリテーションの最大の目的は、早期社会復帰です。

入院している場合は、できるだけ早く退院できるように、通院の場合でも、できるだけ早く骨折前の状態に戻れるようにすることが最大の目的になります。

手首の骨折で入院する例は「稀なケース」だと思うかも知れませんが、骨折した側が聞き手だったり、日常生活の助けが得られないお一人暮らしの高齢者の場合など、入院での看護が必要な場合がでてくるので一概に「稀なケース」とはいいきれません。

 

早期社会復帰を目的としているので、関節が固ければ動きができるように、筋力が弱ければ力がつくようにしなければいけません。

骨折とひとことでいっても、仕事内容や持病など、みなさん背景にあるものは様々ですので、完全オーダーメイドのメニュー作成となってきます。

理学療法士の役割は、こういった「オーダーメイド」の理学療法プログラムを計画し、実行していくことです。

 

一般的な理学療法

一般的な理学療法のプログラムは次のようになってきます。

  • 脈拍や血圧の管理
  • 持病の管理
  • 晴れやむくみの管理
  • 痛みのでにくい姿勢や動作の指導
  • 固定部位以外の筋力トレーニング
  • 全身の心肺機能トレーニング
  • 骨折部位以外の関節機能障害の改善
  • 骨折部位付近の関節機能障害の改善
  • 骨折部周辺の筋力トレーニング
  • 仕事や生活に応じた具体的なトレーニング

 

たくさんあるように感じるかも知れませんが、これらのどこかを省くと回復に時間がかかることになります。

リハビリテーションが充実していない地域などでは、十分な理学療法がなされず、手がむくみ、腫れが引かず、関節は熱ぼったく痛みが残り、腕全体が痺れ、日常生活もままならない、といったことが起きやすくなってくるのです。

実際に私が海外の病院で技術指導をしていた頃は、そのような患者さんがたくさんいました。

 

具体的な理学療法の実例

以上の一般的な解説を踏まえ、私が担当したある症例をご紹介します。

その方は、「橈骨遠位端骨折」という疾患名でリハビリテーション科に理学療法の処方が出された患者さんで、特に内科的疾患は他にありませんでした。

医師の処置によって、シーネという石膏で肘の先から手首まで固定され、三角巾で首から吊り下げられた状態です。

三角巾で腕を吊るすのjは、骨折部への衝撃を防ぐ意味とともに、血液が鬱滞しないように心臓の位置あたりに止めるという意味も持っています。

私がまず気になったのは、歩きかたがぎこちないことでした。

三角巾で片腕を吊るしていると、どうしても姿勢に偏りが出てきます。

骨折で痛みがあるならなおさらです。

そうなると骨盤のゆがみが起き、歩きかたも正常ではなくなってくるのです。

 

そこで姿勢や動きかたのチェックをしながら、関節のゆがみを改善させることから始めました。

骨盤のゆがみはもちろんですが、肩周囲の関節機能障害の改善は重要です。

肩周囲の動きに硬さがあると、循環状態が不良となり骨折部周囲のうっ血が起きやすくなります。

そうなると複合的に神経刺激が起き、痛みを感じやすくなったり炎症がおさまりにくくなるのです。

 

適切に関節機能障害を取り除き、適切に骨折固定部位以外の動きを出すことは、こういった2時的な障害が起きるのを防ぐことができます。

 

骨盤や肩周囲の動きが確保できたら、骨折固定部以外の運動療法を実行するとともに、痛みのないような動作指導をおこないます。

固定期間は約4週間と見込まれるため、その間の骨折部保護が生活指導としても重要ななるのですね。

ちなみにこの症例の場合は、手先は動かせるので、できるだけ手を使ってもらい循環状態を保ちながら固まるのを防ぐことはとても大切です。

 

固定期間が終われば、手首周囲はとても硬くなっているので、ゆっくりと関節を動かしていきます。

ただし、固定期間中にそのほかの準備はすでに終わっているため、その後の回復は比較的順調にいきます。

できるだけ早めにリハビリテーションを開始するのは、こういった意味があるからです。

 

 

まとめ

手首の骨折後のリハビリテーションとして、一般的な理学療法プログラムをご紹介しました。

適切な運動をおこなうことが、早期回復につながるので、ぜひとも参考にしていただきたいと思います。